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「1%の可能性も信じる」とか言いながらいつでもどこでもハッハーンな人の日常日記(意味不明
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「キョン、起きてったら」
頭の中に広がるエコーのかかった声。

昨夜はウッドハウスで共に過ごしたハルヒの事を考えてたら一時間強経過していた。
つまりあまり眠れなかった。

やっと夢の世界に入れた、と思えば・・・

「起きなさいよ。 キョーンー」
もうハルヒから呼び戻しがきたようだ。
夢を見た記憶も無い。
休息を得た記憶も無い。

不満はあったが朝ならばしょうがない。
遭難しているんだ俺たちは。
少しでも早く皆の所に戻らなければ。

少しずつ瞼を上げたら、もの凄い光が網膜に写った。

「早くしないと遅刻するわよ」

視界がまだ慣れていないためか光のせいで目が痛い。
晴れたのか・・・?この光からして快晴だな。

それよりハルヒは今なんて言った?
『遅刻』
いや、待て。
学校? そんなわけないだろ。
今俺とハルヒは遭難中だぜ?

「ほら、しゃきっとしなきゃ!」
「待てよハルヒ」

ちょっとづつ視界が慣れる。

「ハルッ・・・!!!」

一瞬だけ確実にハルヒの姿が見えた。

ハルヒと信じられない姿。
かなり大人っぽくて、髪が腰辺りまで伸びていて、そしてポニーテール。
正直綺麗だった。
吸い込まれそうなぐらいギンギンと光らせる黒い瞳。

そして何より、幸せそうな笑顔。




しかし、そんなハルヒの姿は一瞬で光に包まれた。
今では何も見えない。

俺がどこにいたのか・・・
何故遅刻なのか。
まったくわからない。

脳裏に焼き付いたハルヒの姿しか覚えていない。

「あたしだけ先に行くわよ」
ハルヒの声だけしか聞こえない。

何故・・・
ハルヒ、何故。 何故行ってしまうんだ・・・
なぁ、まだやる事はいっぱいあるだろ?

なぁ、ハルヒ・・・


一緒に過ごす日々はまだ足りないだろ・・・?
















「バチッ・・・ バチバチッ・・・」


暖炉から燃える火の音で元の世界に俺は戻った。
数時間経過しているのに暖炉の火は燃え尽きなかった。
不思議と体が楽で、普通に体も動かせる。
これもハルヒが望んだから、だろうか・・・?
夢だったのか。

何故かハルヒが何処かに行ってしまうんだ気がした。

「キョン、起きるの遅いわよ」
「ハルヒ・・・」
「朝から暗い顔ね」
「安心した」
「何がよ?」
「何でも無い」
むすっとしたような不満気なハルヒ。
そして何かを思い出したかのように
「キョン! これどういう事!?」
「これとわ?」
「何でこんな状況になってるのよ!」
「ん、風邪引いてもらったら困るからな」
「だからって・・・ 変態! 違うわ、変態とかはどうでもいいのよ!!」
意味が分からなかった。
変態といいながら変態はどうでもいいのか。
痴漢とかされたら許可すんのか?
いや、ハルヒに痴漢するような奴がいるならば絶対ぶん殴ってやる。
「なんであんたは毛布着てないの!」

今の状況にというのは、
この家に存在していた二枚の毛布をハルヒに巻き付けてその上から俺が抱き締めるという
何とも恥ずかしい事だった。
しかしこれなら温かい。
ハルヒも風邪を引くことは無いだろう、と俺は考えた。

「俺は別にいいからな。 へっくしゅんっ!」
代償として俺が風邪を引いたようだ。
いや、別にいいんだよな。
「っ!! バカキョン! あたしのためにやったなら大迷惑よ! こんなの嬉しくないわ
よ!!」
「お前のため・・・ いや俺のためでもあるぞ」
「あんたのため!?意味わからない! 何でよ・・・! 意味わからない!!」
「えっ、ハルヒ・・・?」
「わからない・・・ 意味わからないわよ・・・!!」
毛布にハルヒから出た透明な滴が落ちていった。
染みの広がりが次々と出来ていく。
「オイッ、大丈夫か!?」
「バカ、バカバカバカ・・・ なんでよ・・・」
「すまん、言ってる意味がわからない」
「あんたが風邪引くなら、あたしが風邪引いた方がマシよ!」
「逆だ逆」
「何のためにこんな事したの!?」
よくわからない。
風邪だけでココまで怒鳴るハルヒ・・・
何のために、だと?
「・・・」
『大切な人だから』
言えるはずが無かった。
言っても意味が無い気がした。
「もう離して・・・」
「怒らせちまったか・・・? すまんな」
「いい、大丈夫。 ちょっと一人にしてほしい・・・」
想定外過ぎた。
昨夜はあんな可愛い寝顔が一変して崩れた。
外は未だに暴雪。 外に出れるような天候では無かった。
俺はとりあえずハルヒから離れた。
ハルヒは肩が震えていた・・・ 涙もボロボロと流しながら。










俺の頭の中には『後悔』の言葉だけが残っていた。
とにかく暖かい飲み物を、と思ったが、ポットの前に立っていても手は動かず思考回路の
みが動いていた。
ハルヒがどうして怒鳴ったのか。
理由・・・
下心なんて無い、と言えば嘘になるが、ハルヒ相手にそんな挑戦状を叩き付ける事など俺
にはできない。

そして俺は何故こんなにハルヒを心配するのか。
理由は一つしかない。
『好きだから』なんてもんじゃない。



『大切な人だから』











「ほら、寒いだろ。 飲んだ方がいいぞ」
俺はハルヒにコーヒーの入ったマグカップを渡しに行った。
「うん、ありがと」
無愛想にハルヒは答えたが、しっかりとマグカップを掴んでくれた。
「ごめんね。 さっきは怒鳴っちゃって・・・」
予想以上に復帰るのが早いな。
「気にするな。 俺が悪かったんだ」
「違うわよ。悪いなんて思ってなかった・・・」
「よくわかんない奴だな」
久々に笑いが出た。
何が面白いのかわからないが笑いが込みあげてきた。
「わ、笑うな! 何よバカ!」
怒りながらもハルヒはコーヒーを飲み始めた。
「ちょっと苦くない・・・?」
「そうか?」
「うん、苦いわよ。 こういう時は究極まで甘くするのが定番でしょ?」
どっからの知識をこいつは俺に披露しているのか。
大体究極な甘さってなんだ。
「俺は基礎知識が欠けてるからな」
「ふふふっ、ほらあんたも座りなさいよ」
「ん、あぁ」

言われた通り俺はハルヒの隣に座った。
一応少しだけ距離をとってな。


「むっ・・・」
不機嫌そうなハルヒの声を察知した俺は更にハルヒから距離をとった。
「・・・」
ハルヒの不機嫌オーラは完全に感知出来た。
もっと離れろってか・・・?
「なんで遠ざかるのよ!」
突然ハルヒが怒鳴った。
「だって嫌なんだろ!?」
「もう動かないで」
「え? うん? なんでだ? ・・・っっ!!」

既にソファーのはしっこに追い詰められいた俺。
更に追い討ちをかけるようにハルヒは近付いてきた。
なんだ?ソファーから落としたいのか?
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

なんとも言えない空気だった。
空間が沈黙していた。
世界が氷ついていた。
「・・・なぁ」
「・・・」

「・・・」
沈黙に圧し殺された。


ハルヒは静かに俺に密着していた。
俺の肩に頭を乗せて、良くわからないが幸せな感じだった。
カチコチな俺。
恥ずかしさも、驚きも、嬉しさもあった。
ハルヒはずっと笑顔が崩れなかった。

「ハルヒさ・・・ん・・・?」
「キョン、ありがと」
「へ?」
気の抜けた生返事が出てしまった。
それほどハルヒの感謝の言葉には驚かされた。

――――――――――ありがと。

感謝・・・
「何に対しての感謝だ?」
「珈琲よ!」
「あぁ、なるほどね」
本の少し、期待があったが、やはり確率としては低すぎた。
しかしハルヒは言葉をはっしてから後悔するようにソッポ向いた。



「救助隊とかまだ現れないか・・・」
「救助・・・?」
微妙にハルヒは疑問形だった。
「早く皆の所に帰りたいよな」
「え・・・?」
再びハルヒは疑問形だった。

「あ、うん・・・ そうよね・・・」
「どうした?」
「別に・・・」


ハルヒの表情が曇っていた。
何かを言いたそうだが・・・

「やっぱり・・・」
「ん?」
「キョンはあたしじゃダメだもんね・・・」
「は?」

ハルヒじゃダメ?

「みくるちゃんか有希の方が合ってるもの」
「じゃぁ逆に聞いてやる。 俺はお前を選んだらダメか?」
俺の中で目覚めた一つの決心。
「え? 何それ? どういう意味・・・?」
「言葉の通りだ」
俺は人生最大の挑戦をしている。
「そっか・・・ これも夢なんだ」
儚く散ったムード。
溜息が漏れそうになったが必死に我慢した。






いきなり頭が悪くなったのかコイツは。
俺の大切な人『凉宮ハルヒ』。
選べるなら選びたい。
ただハルヒは隠しキャラのように俺には選べる資格が無い。
「キョンが・・・? 誰を・・・?」
「凉宮ハルヒを」
「嘘・・・ 夢・・・?」
「現実だ」
「待って、待って、待って」
ハルヒは俺の肩から頭を離し、持っていたマグカップを俺に手渡して考え込んでいる。
「ハルヒ・・・?あたしよね・・・?」
よくわからない奴だ。
「キョン・・・が? なんで、何のために?」
大切な人だからかな。
「でも・・・ あたしは・・・」



「いや、無理はしなくていい。 思ったことだけ言ってくれ」

ハルヒはコクッと頷いてから、ゆっくりと此方に振り返った。
綺麗な黒い瞳を輝かせ。
ハルヒも決心したかのような顔付きで、口を開いた。












「ごめん」



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